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2010年02月25日

『廃色ノ残照』/ZIT-agency

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『廃色ノ残照』/ZIT-agency

路傍に放置された廃車を記録し続けるウェブサイト「叢荘8148号室-草ヒロ展示室」が、
満を持してリリースした、完全限定生産の豪華本。
廃車には興味がなかったけど、本書が素晴らしい内容であることは予測がついた。
それは、ウェブサイトの管理をしているタチ氏の、本や活字に対する偏執狂的な愛情を、個人的に知っているからだ。

やはり期待通り素晴らしい内容であった。
誌面作りにたっぷり費やされた時間と愛情が、ページをめくるたびに伝わってくる。
郵送に使われたクラフトの封筒から、包装に使われた銀色のシール、特典のステッカー、箱入りの装丁など、全てに愛がつまっている。

この、ホームメイドな手触りと採算度外視の過剰な愛情こそが、優良なインディーズブックの真骨頂だ。本を所有するだけで、あたたかい気持ちにさせてくれる。

中身は、約7年にも及ぶ廃車探索活動から、貴重な廃車をピックアップした集大成的な内容となっている。専門的な知識に裏付けされたヅラヲ氏の解説は、専門用語を駆使しながらも決して評論的にならず、廃車に対する愛情と発見することの喜びが滲み出ていて、読んでいてワクワクさせてくれる。廃車マニアであれば、ヅラヲ氏の解説と膨大な記録写真だけでも、買って読む価値があるはずだ。

しかし、彼らが本当に素晴らしいのは、もしくは、個人の趣味の域を完全に脱している点は、廃車の情報を専門的に極めることを自己目的化しなかった点だ。
マニアックな情報に精通した優秀な専門家ヅラヲ氏と、電気グルーヴでいうところのピエール瀧のようなムードメーカー・インチン氏(憶測です、違ったらごめんなさい)と、ビジュアルとテキストの見せ方を心得ている編集者の視点を持ったクリエーター、タチ氏。それら3者が、対等な関係で集まっている点が、彼らの強みであろう。まるでバンドのメンバーように役割が明確な3人だからこそ、多用な価値観が生まれ、表現に深みが出て、結果的に僕のような廃車に興味のない人にも、楽しませるパワーを持った本が実現できたのだ。

残念ながら、予約の段階で全て売り切れてしまい、現在では入手することはできない。
(増刷しないのな?)
しかし、彼らの活動は現在もウェブサイト『叢荘8148号室-草ヒロ展示室』で楽しむことができる。ぜひ一度のぞいてみてほしい。放浪の旅に出て、探索して、美味いモン食べて、
それを表現する、という至福のサイクルを垣間見ることができます。
(酒井)

『叢荘8148号室-草ヒロ展示室』
http://zit-agency.hp.infoseek.co.jp/kusamurasou/hiro_index.html

2008年07月25日

廃墟/工場

廃墟と、コンビナートなどの巨大な工場を合体させた写真集。
著者は、東海秘密倶楽部と相互リンクさせていただいている
ウェブサイト「DAREDEVIL」のHEBU氏。

工場写真はさておき、廃墟写真について思うことを書こうと思います。

芸術写真ではまんぷく感を覚えない僕は、写真集を買うことはほとんどない。
廃墟の写真集を購入する場合においても、実用性や情報の希少性を求めてしまう。

どういうことかと言えば、例えば僕の大好きな廃墟写真集「廃墟漂流」(小林伸一郎/マガジンハウス)の場合、写真と共に記録された物件名と市町村名こそが重要で、写真においては、この廃墟にはこんな美を宿す場所が隠されていたのか…という具合に、写真家の美を発見する力を評価の対象にしてしまう。

従って、写真集に掲載された被写体の場所に、自分も行きたいと思わせてくれるような場所が数多く掲載されていないと、とてもじゃないけど購入する気になれない。
それは僕自身の廃墟趣味が無駄に長く、多くの場所を知りすぎてしまったことによる弊害かもしれない。

廃墟/工場の写真集に関していえば、残念ながら目新しい物件はなかった。廃墟趣味が長い人間たちにとって、ここから鮮烈な驚きを覚えることは難しいかもしれない。
では、だからといって、この写真集が意味のないものかといえば、もちろんそんなことはない。

何も、廃墟に興味がある人間が全員、日本広域の廃墟に知識があるわけではない。新たに廃墟に興味を持つ人間、もしくは廃墟に関心のない一般人といった大多数の人間にとって、廃墟マニアがいう有名・無名物件というこだわりは、何のこっちゃっかさっぱりわからないし、どうでもいいことである。
そんな、廃墟に対してまっさらな人たちに対して、この写真集は有効である。
本書の特徴として、廃墟をことさら特別視したり非日常感を強調したりせずに、日常の風景と地続きに、ゆるやかな時間が流れる場所として表現している。
それは、廃墟の魅力を広げたともいえるし、廃墟のイメージを新たに更新したと言うこともできる。
「廃墟」という被写体の表現は、時代や世代とともに、変化している。
10年前には10年前の表現の仕方があり、2008年には2008年の表現の仕方がある(はず)。
時代と共に変化する「廃墟」。その表現の仕方が時代と共に変わるのは必然である。
本書は、そんなことを告げてくれる写真集であり、廃墟写真の最新モデルである。

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